養子を一人増やすと相続税が減少する?その効果と注意点を税理士が解説
相続税対策としてよく話題に上るのが「養子縁組」です。中でも「養子を一人増やすと相続税が下がる」という話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
この記事では、養子縁組による相続税の節税効果について、税理士の視点からわかりやすく解説します。
養子を増やすと相続税が減少する理由とは?
相続税の計算では、法定相続人の数に応じて基礎控除額や生命保険・退職金の非課税枠、各人の税率区分が決まります。養子縁組によって相続人が増えると、これらに影響を及ぼします。
■ 基礎控除額が増える
相続税の基礎控除は、以下の計算式で決まります。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
例えば、相続人が3人から4人に増えると、基礎控除額が600万円分増加し、その分、課税遺産総額が圧縮されます。
■ 各相続人への税率が低くなる可能性も
相続税は、法定相続分に応じた各人の「取得金額」に応じて累進税率が適用されます。養子が増えることで相続財産の分配が分散され、一人あたりの課税額が減り、税率も下がる可能性があります。
養子に関する制限に注意!
税務上、誰でも何人でも養子にすれば節税できるわけではありません。相続税法では、以下のような養子人数の制限が設けられています。
■ 相続税法上の法定相続人に含められる養子の数
被相続人に実子がいる場合 | → 養子は 1人 までカウント |
---|---|
被相続人に実子がいない場合 | → 養子は 2人 までカウント |
これを超える人数の養子を縁組しても、相続税の計算上は「法定相続人」に含まれません。ただし、遺産の分割上は当然、養子としての権利を有します。
節税効果のシミュレーション
<前提>
- 相続財産:1億5,000万円
- 相続人:妻と子1人
- 養子:なし → 養子1人に変更
- 基礎控除:
→ 養子なし:3,000万円 + 600万円×2人 = 4,200万円
→ 養子1人追加:3,000万円 + 600万円×3人 = 4,800万円
課税遺産総額が600万円減ることで、相続税の総額が数十万円〜数百万円軽減されることもあります。
養子縁組の注意点とリスク
節税効果があるとはいえ、養子縁組には法的・人的な影響も大きいため慎重に検討する必要があります。
● 他の相続人との関係悪化の可能性
養子を増やすことで、他の相続人の取り分が減少する可能性があり、遺産分割トラブルの火種になることも。
● 法律婚による嫡出子である必要あり(普通養子)
税務上、効果があるのは普通養子です。特別養子縁組や養子縁組後すぐの死亡などは、税務上否認される可能性もあるため注意が必要です。
まとめ:養子縁組は節税になるが、慎重な判断が必要
養子を一人増やすことで、相続税の基礎控除が増えたり、税率が下がるなどの効果があります。ですが、単なる節税目的での養子縁組は、税務署に否認されるリスクや親族間の関係悪化なども考慮する必要があります。
相続税対策として養子縁組を検討されている場合は、事前に税理士など専門家と相談し、シミュレーションを行ったうえで判断することをおすすめします。
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